驚くことに、これ程までに我々の歴史に深く関わっているイエスの公の場での活動期間は、わずか3年という短いものでした。もしイエスが実在の人物でないとするならば、単なる神話が歴史に大きな変遷もたらしたことになります。世界的歴史家H・G・ウェルズは、「歴史上、我々に最も重要な遺産を残してくれた人物は誰だと思いますか?」と聞かれ、「イエスに他なりません。」[13]と答えています。
これら文書による証拠と歴史的影響は、すべてイエスが実在した何よりの証です。私達は歴史の中にイエスの詳細な足跡を見ることができるのです。伝説には事実の裏づけとなるような詳説は存在しません。
デューラントや他の学者達にとって鍵となったのは、時間的要因です。神話や伝説が定着するまでには、数百年という時間がかかります。例えば、ジョージ・ワシントンは決して嘘をつかなかったという話がありますが-おそらくそれこそ嘘でしょう-それが彼の伝説として広まるまでに2世紀かかりました。一方、イエスの話はあまりにも早く伝播していきました。それゆえにイエスが伝説上の人物に過ぎないとは考え難いのです。また、もしイエスが実在しなかったのであれば、彼と敵対していた者達は最初からその存在をただの伝説として片付けていたはずです。しかし彼らはそうしなかったのです。
このような先人による記述やイエス・キリストが歴史に与えた影響により、懐疑的な歴史家達ですら、大多数がイエスは神話でも空想上の人物でもないと認めざるを得ませんでした-ある神話研究の専門家を除いては。
オックスフォード大学出身のC・S・ルイスは、当初、イエスはただの伝説に過ぎないと考えていました。「およそすべての宗教、つまりすべての神話は人類が創造した。キリストもロキも似たようなものである。」[15](ロキは北欧神話に出てくる神々の1人です。同じく神話に出てくる神トールに似ていますが、ポニーテールはありません。)
イエスは神話に過ぎないと公然と非難したその10年後、ルイスは当時を知る人物が残した記述や、歴史に裏付けられた詳説を知りイエスの存在を確信することになりました。
イエス・キリストは歴史という大地を、まるで巨大な地震のように揺り動かしたのです。その痕跡はグランド・キャニオンよりも大きく、学者達は2000年前この世に確かにイエスが実在し、当時の世界に衝撃をもたらしたことを確信したのでした。.