歴史的影響
伝説上の人物が実在していたか見極めるうえで重要なのが、彼らがどのように歴史と関わってきたかということです。例えば、アーサー王伝説のアーサー王と円卓の騎士は、その高名さゆえに実在の人物だったと多くの人が信じています。歴史家たちは彼らが実在したことを証明しようと研究を重ねましたが、いまだに彼らが法律や道徳、宗教に与えた影響を見出せずにいます。あの有名な都キャメロットを有する王国が、近代に至るまで歴史になんら痕跡を残していないなどということが有り得るのでしょうか。この歴史的影響の欠如により、アーサー王と円卓の騎士は伝説上の人物に過ぎないことが分かるのです。
歴史家トーマス・カーライルは、「功績なくして偉人となり得ず。偉人伝こそが真の世界史である。」[11]と述べています。 カーライルが記したように、伝説ではなく実在の人物こそが歴史に影響を与えるのです。
実在したアレクサンダー大王は、その軍事征服と国や政府、法律を変革したことで歴史に大きな影響を及ぼしました。それでは、イエスはこの世にどのような影響を与えたでしょうか?
紀元1世紀頃、ユダヤ、ローマ両政府とイエスの人生には何の接点もありませんでした。ローマに暮らす一般市民がイエスについて知ったのは、彼の死後何十年も経ってからのことでした。ローマ文明はその間、イエスの教えとはかけ離れた状態にありました。
やがてイエスの使徒をコロッセウムで殺すのが国民的娯楽となる頃には、数世紀が経過していたはずです。他の国々でも同様でした。イエスを知っていた人はほとんどいませんでした。イエスは軍隊をもちませんでした。本を書いたわけでもなければ、法律を変えたわけでもありません。ユダヤの指導者達は、イエスを人々の記憶から抹消しようと試み、一旦は成功したようにみえました。
しかし現在、古代ローマ帝国は廃墟となり果てました。無敵を誇ったカエサルの軍隊や権威を誇った壮大なローマ帝国は、もはや完全に忘れ去られてしまいました。ですがイエスは忘れ去られることなく、今日までその名が語り継がれています。一体なぜでしょうか?
- 歴史上、イエスについて書かれた本は他の誰よりも多い
- イエスの言葉を政治の基盤とする数々の国家の存在。デューラントは次のように述べている。「イエスの勝利が民主主義の始まりだった」[12]
- イエスの山上の垂訓により新しく道徳的、模範的概念が誕生した
- 学校や病院、人道支援活動が、イエスの名のもとに設立された。ハーバード、イエール、オックスフォードの各大学は、イエスの信徒によって創設された数少ない大学である
- 西洋文明において女性の地位が高いのは、イエスの教えによるものである(イエスの時代女性の地位は低く、彼の教えが浸透するまで事実上女性の人権はないに等しかった)
- イギリスとアメリカの奴隷制度が廃止されたのは、命は皆等しく尊いというイエスの教えがあったからである
- ドラッグやアルコール依存者、売春婦など人生の目的を見失っていた人々が、イエスを知ることで人生が変化したと告白している
- 世界中で少なくとも20億人がイエスに従うと宣言している。中には口だけの者もいるが、大部分の人々がイエスの教えを実践し、伝えることで世界中に影響を与え続けている。「命は皆尊い。イエスを模範とし互いに愛し合いましょう。」