空っぽの墓の事件
真面目な歴史家で、イエスが十字架から取り外されたときに彼が本当に死んでいたか疑う人はいません。しかしながら、イエスの死体が墓からどうやって消え去ったのか疑問に思っている人は大勢います。イギリスのジャーナリスト、フランク・モリソン博士は、最初、復活は作り話かデマのどちらかだと思っていたので、復活を反証する本を書くためににリサーチを始めました。[19]その本が有名になりましたが、本来の意図ではない別の理由によってです。
モリソン博士は空っぽになった墓の一件の解決を試みることから始めました。その墓は、サンヘドリン議会のメンバーであったアリマタヤのヨセフのものでした。当時のイスラエルでは、議会のメンバーであるということは、ロック・スターのようなものでした。議会のメンバーが誰か、誰もが知っていました。ヨセフが存在した人だったことに間違いはないでしょう。そうでなければ、ユダヤ人の指導者たちが復活を反証をするのに、話は詐欺だったと暴露したことでしょう。それに、ヨセフの墓がよく知られた場所にあって簡単に確認できたこともあって、イエスの体が「墓地で失われた」などといった考えはそれっきりにするしかありませんでした。
モリソン博士は、もしその空っぽ墓話が実話でなかったなら、イエスの敵は何故それが真実だと言い続けることを許したのか?と疑問に思いました。イエスの死体が発見されれば、即座にその構想全体を潰したことでしょう。
そして、イエスの敵について歴史的に知られているのは、イエスの弟子たちが死体を盗んだと非難していることと、それによって墓が空っぽだったという共通の考えが断定されたということです。
ウェスタン・ミシガン大学のポール・R・マイヤー博士は似たような内容を述べています。「全ての証拠が慎重にかつ公平に評価されているのなら、イースターの朝、イエスが埋葬された墓の中が実際に空だったと決断を下すには、確かに筋が通っている。そして、この供述を反証できる証拠は少しも見つかっていない。」[20]
ユダヤ人指導者たちは唖然としました。彼らは、弟子達にイエスの死体を盗んだと非難しました。しかし、ローマ人たちは、訓練された守衛部隊(4~12人で構成される)に墓を24時間体制で守護するよう命じてありました。モリソン博士は、「これらのプロたちが、どうやってイエスの死体を荒らさせることができたというのか?」と問いかけています。誰かがローマ人守衛をすり抜けて、2トンもする墓石を動かすなんて、不可能だったに違いないのです。それにもかかわらず、墓石は動かされ、イエスの死体が行方不明になったのです。
もしイエスの死体がどこかで見つかりそうなら、イエスの敵が急いで復活なんて嘘だと暴露したことでしょう。カリフォルニア州法廷弁護士協会の元会長トム・アンダーソン氏はこの議論の長所をこうまとめています。
周知の出来事ですから、歴史家、目撃者、論争相手から一人くらいはキリストの体を見たと永遠に記録していたとしてもおかしくないと思いませんか?復活に対する証言になると、歴史の沈黙が音を消してしまっているのです。[21]
そうすると、主体のない証拠と、確実に墓が空だったという周知の事実によって、モリソン博士はイエスの死体が墓からなんらかの理由で消えたという証言は信用できると認めました。